地声寸言『産地などの偽装』
この間からホテルなどで供される食品の産地やら銘柄その他で偽装が行なわれていることが問題となっている。
この問題は前からもあったので、例えば魚沼産こしひかりの店頭販売量が実際の出荷量の三〇倍にもなっていることが暴露された。
昔から米は産地の違うものなど幾種類かを混ぜた方が味があっておいしくなる。どのように混ぜるかに米屋の腕があるのだ、だからある程度混米となって入っていれば、魚沼産こしひかりと言っても、全く不正ではない、と考えられる。ただ三〇倍に薄められているとしたら、何が何でもひどいものである。ということを聞いていた。産地に関しては、例えば豊予海峡でとれたさばが大分県であげれば関さば、愛媛県に上がれば崎さばとなる。無論関さばの方が市場で高い値がつくという。これなど、どう考えるか。そうだ、松坂牛の表示も大問題となって、結局産地松坂の地域的範囲を限定するとともにそこで一定期間餌を与えて養ったものを松坂牛ということになったと記憶している。
もっとも松坂へ来る牛は、もとは因伯牛であったり、但馬牛であったりしても差支えない。
酒などどうなっているのかな、と思う。昔から桶買いは当り前になって、灘の大手の酒屋は、新潟、東北、山陰などいろいろなところから原酒を買い、混ぜえいる、と聞いていた。混ぜ方が技術だそうだ。いずれにしても、そういう酒は皆灘のブランド銘をつけて堂々と売られているのである。
今、酒の銘柄は数千あるが、酒造家の数はその何分の一かになっている。銘柄のラベルだけを印刷して貼りつけているのを不思議ともされていない。だまされている消費者は昔から同じ酒を飲んでいる、と思っている。
産地などの表示を悪気ではなく正確にしていなかった例も少なくないだろう。○○産のさんまとメニューに書いてあっても、たまたま○○産のものが手に入れられず、他の産地のもので代用したとする、その時、こまめにメニューを訂正したらいいのだろうが、知ってて、或いはうっかり元のまゝとなっていることもあろう。
私たちの舌の程度では、少々違っていてもわかりはしない。しかし、だから、いい加減でいいと言っているのではない。余り、そんなことにこだわらないようにしたらいいと思うし、ウソにならないようにしたらよいと思う。松坂産と書かないで和牛としておけば、よいではないか。
日本食(和食)が文化遺産となるようだが、それもいかに食材を活用し、見た目もいい、おいしい、そして最近ではヘルシーな料理ということを認めて貰ったようなものだが、われわれはそれ程のものを毎日食べているわけでもないし、要するに栄養があっておいしいものを食べられればいいんだから、その辺を頭に置いて、産地表示問題なども考えて欲しい、と思っている。
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相沢英之 (平成25年11月4日) |
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