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活動報告
地声寸言『カジノ』

 近頃又「カジノ」論議がやかましい。カジノの開設を認めよという超党派的に動きがあるという。今までにも絶えずそういう話は聞くし、随分熱心な議員もいたようだが、法案を出すところまでは行ってない。言うまでもなくカジノは賭博場である。賭博は現行刑法第二十三章に、「賭博及び富くじに関する罪」とされている。
 写してみる。

 (賭博)
百八十五条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
(注)「特則」=金商二〇二「公訴時効」=刑訴二五〇
(常習賭博及び賭博場開張等図利)
第一八六条 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
 (注)「加重規定」=組織犯罪三「常習犯の例」=暴力一ノ三・二「特則」=金商二〇二「公訴時効」=刑訴二五〇
(富くじ発売等)
第一八七条 富くじを発売した者は、二年以下の懲役又は一五〇万円以下の罰金に処する。
2 富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は一〇〇万円以下の罰金に処する。
3 前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二〇万円以下の罰金又は科料に処する。
 (注)「特則」=競売、当せん金付証票法、自転車、小型自、モーター
ボート「公訴時効」=刑訴二五〇

「カジノ」は普通名詞で使われているが、その意味は何か、である。
 手元にある研究社の英和辞書には、こう書いてある。

 カジノ(ダンス・社交などに用いられる一種の娯楽場、とくに賭博場、とくにイタリアの四阿(あずまや)。
 小学館の「日本国語大辞典」には次のように記している、「フランスCASINO、元来はイタリー語で小さな家、クラブの意味。
 一(名)「カジノ」各種の娯楽施設を持った、西洋の賭博(とばく)場。以下略。
 二 カジノ・フォーリーの略。又、これと同じような軽演技の興行場。以下略。
 カジノは今や世界中に存在して、かなりの収益をあげているといわれている。
 賭場は楽しみであって、「偶然の勝敗により、財政上の利益の得喪を争うことを意味する」(大審院判決昭一〇・三・二八、刑事一四・三四六)。
 賭博をしたものは罰せられるが、「ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りではない」。となっている。
 一時の娯楽は供するものとは、一般にはチョコレートや食事等が判例に出されている。
 マージャンやゴルフでは握らない方が少ないと思うが、例えば食事代も安くはないこともあるのだが、何円まではいい、という話も聞いていない。
 戦前、子供の頃、菊池寛などがマージャンで挙げられたことを新聞で見た覚えがあるのだが、かなりの額の金をかけていたのだろうか。
 イギリス人は賭が好きだということをよく聞くが、そもそも実質的に賭博行為を法律によって例外的に認めているので、何となく気分的にどこが悪いんだ、という気分を讓成しているのではないが。
 そして、財政、経済政策その他の理由によって種々の賭博・富くじ行為が公認されていることに注意しなければならない。
 賭博行為については証券取引法、商品取引所法が、富くじについては当せん金付証票法(宝くじ)、競馬法、自転車競技法(競輪)、スポーツ振興投票の実施に関する法律(いわゆるサッカー法)、モーターボート競技法があり、これらの法律によって賭博・富くじ行為は正当行為とされ、三五条によって違法性が阻却される。これら一種の公益賭博・富くじの存在は、賭博および富くじの罪の処罰根拠が現在においては健前だけに終っているという印象を与えるであろう。(大谷寛「刑法講義各論」(五〇四頁)

 パチンコなどは勝って玉が溜ってもそのまゝ金になって戻ってくるわけではないが、建前は賞品で貰うことになっている。ただし、その商品を売れば直ちに金になる仕組となっているので、玉を現金に代えるのと全然違っていない。明かに実態は違法状態である。
 日本人も海外に出かけるとカジノに行く。その最大なものは米国のラスベガスである。
 社会主義の国であったロシアには一昨年まではプチ・カジノと言われた通りがモスクワにあって、カジノが沢山あったが、昨年からプーチンの一言によって皆無くなったという。あの国のことは、どうもよくわからないが、他にカジノをなくした、という国の話を聞いていない。
 日本にカジノを開くことは頭から反対はしないが、さりとて大賛成という気持ちもない。パリは今はどうかしらないが、昔は郊外にあった一軒のカジノに入るにはパスポートが必要で、フランス人は入れなかったと聞いている。
 外国へ観光で出かける日本人もかなりいるから、その時に楽しみにカジノへ行く位が丁度いいような気がするが、どんなものだろうか。
 どうも財政上の理由でカジノを許可しても何だか本当に良いことをするような気がしないのは、古い人間なのだろうか。


 
相沢英之 (平成25年10月25日)