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活動報告
地声寸言『あてはならぬ物価』

 ここで物価の解明をしようという積りではない。断片的だが物価変動の事例をいくつか挙げて、物価を考える場合の参考に供しられれば幸いと考えている。
 物価は明治の初めからの指標を眺めてみると、戦争だとか、大地震だとか、いろいろな異常な事態の時期は別として、トレンドとしては確実に上昇している。これは、日本だけではないと思うが、物価というものは、そういうものかな、と観念した方がよい。
 ところで、物の価格の中で、株式(物の価格と言えるかどうか疑問だが)、土地、ゴルフ会員権及び絵画の四つの価格を見てみると、申し合わせたように上ったり下ったりしている。何もこの四つが物の価格の代表的なものだと言う積りはないが、私は、前からこの四つの物の価格の連関に思いを致している。
 株価は日経平均でみると、平成元年十二月二十九日に三万八千九百十五円と四万円近くまで上昇した後は、下がりに下がって平成十五年四月二十八日に七千六百七円と八千円を切った。それが持ち直して平成十九年二月二十六日に一万八千三百円まで上昇したが、平成二十年十月二十八日午前にまた下がって六千九百九十四円と遂に六千円台に突入、その後また戻して平成二十一年四月十日に一時九千円の声を聞くまでになった。(平成二十一年四月十日)
 その間の変動の原因はいろいろあること勿論であるが、最近の暴落は言うまでもなく、サブプライムショック以来の世界的な金融不安に始まる景気不況の波にあえなく打たれたためである。
 この株価の暴落は、日本だけではなく、米国、英国などヨーロッパの諸国に例外なく起った現象である。
 景気の変動を示すいろいろな指標のなかで株価は連日示される、もっともわかり易い指標であり、又、その変動が企業の持株の評価の変動に連結し、とくに金融機関の貸出しの態様にも強く影響しているだけに目が放せない。
 株価も他の物価と同じように需給の関係で決まるものであるから、株価を上げようとすれば、とにかく買えばいいのである。数年前に株価が暴落した際、自由民主党のデフレ対策特命委員長などとして、私は、与党の公明、保守の二党の代表とともにあらゆる株価対策を検討し、推進した経験がある。麻生首相にも度々進言をした。麻生首相の反応は迅速で、かなり大膽な施策を次々に発表し、実現をさせたが、米国初め各国の株価はともに反撥した。平成二十年十月二十八日日経平均が一時七千円を切った株価が平成二十一年四月十日に一時九千円の声を聞くまでに上昇した。
 あとは日銀による株の買入れ、政府の息のかかった株の買入れ機構の設立(銀行等保有株式取得機構の拡充でもよい)、年金等の資金による株の買入れ(要すればポートフォリオの改訂を伴なう)などである。これらのうち財政措置を伴なうものについては、将来の国の負担を懸念する向きもあるが、この程度の株価であれば、決して今後国の負担を招く懼れがまずないことは、過去の政府の株価対策の実績に徴して明らかである。
 銀行等金融機関の持株の価格下落は、これらの機関の資本を減少させ、資本比率を下げ、それが貸し渋り、貸し剥しに繋がってくることは明らかであるが故に株価下落の影響は大きい。
 株価回復の目標は差当り一万円、次に一万五千円と思っている。
 次は地価、これまた株価以上に激しい変動を繰り返している。銀座表通りの地価が前のバブルの時は坪一億五千万円、日本中で一番高いと言われた角の鳩居堂のところは坪四億円とか、信じられないくらいの数字を聞いた。それが暴落し、平成十七年頃又バブル再来と言われた時は銀座表通りブランド街で坪一億二千万円の取引まであったと聞いたが、それが又、三分の一以下に下っているという。
 どうも日本は未だ土地資本主義であり、金融機関は質屋でない筈なのに担保は土地という頭が強く、それだけに地価の下落は担保の不足を招き、債権を不良化し、新たな貸付はダメなどころか、貸し渋り、貸し剥し、運転資金の貸付けさえ渋るという状態となる。それは、金融庁の検査方針も影響なしとはしない。かつて私は不良債権の整理促進が更に不良債権を急増させると思い、反対したことがあるが、地価の暴落が深くかかわっていることは事実である。
 そういう株や土地の価格の下落については、暫し、会計上猶予する方策を考えてしかるべしと思っている。時価会計、減損会計の取扱いについて近頃見直し(一時的にもせよ)の動きがあることは結構なことであるし、もっと徹底して貰いたい。公認会計士協会の問題でもある。
 ゴルフの会員権、絵画の価格についても同じような波動がある。が、いささか紙数が不足して来たので、次の機会に譲りたいが、これまた景気の変動を敏感に映している。
 一つ例を挙げる。私はゴルフを始めた四十年以上前、千葉のあるゴルフ場の会員権を友人に薦められて三五万円で購入した。それがバブルの頃は会員権会社の相場表では四千五百万円まで上っているので、喜んでいたら、バブルの崩壊とともに逆戻り百万円を切り、その後三百万円ぐらいになり、又、現在は六〇万円ぐらいで下って了った。
 プレーをする権利さえあればいいとは言うものの、いつの間にか聞いたこともないような外資に売られ、預り金何千万円が百分の一以下にもなったという例は、いくつも聞いている。
 まるで詐欺にも似た、こういう会員権の取扱いは、どこかチェックするところがないものか、と思うばかりである。仕方がないので済まされる問題ではないのではないか、と思う。
 いずれにしても、物価の変動は、身近な問題として関心を呼ぶものだけに、何とか理不尽な変動を調整する手段はないものか。資本主義の仕組みのなかで仕方がないで放置されていられる問題か、どうもよくわからない。読者諸賢如何に思われるか。
(相沢英之)