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活動報告
地声寸言『高速道千円の愚』

 三月二八日から高速道路の通行料金の引下げが本格的にスタートした。
 ETC搭載車に限り、地方の通行料金を土、日、祝日は乗用車について上限千円、平日は全車種全時間帯で三割引き以上にするという。
 観光振興などによる景気刺戟を狙っているとのことであるが、いくつも問題点を含んでいるように思う。
 以下、列記してみる。

一、この値引きによる高速道路会社の減収は国が補填することになっている。その額は、実施してみなければ確かなところはわからないが、推定五千億円と、見積られている。
 言うまでもなく土日に車で遠出をする人が一番恩恵に浴するわけであるが、いわばそういう限られた余裕のある人達に国の税金から補助金を出してやる意義があるだろうか、疑問である。
 しかも、高速道はまだ全国に整備されていないので、一部の人達だけしか利用できない。それも不公平である。

一、高速道の建設に一般会計から国費を投じることはおかしいという一部の有識者の意見を容れて、高速道路会社への出資を止めにした。その代り、高速道の建設予定路線の一部を直轄国道として建設するという、大へんおかしなことを実施している。私は反対である。高速道が会社の道路と国道とが縞模様のようになって、真直ぐ走ると何回もチョビチョビ料金を払わなければならない高速道が出現している。
採算が合わない、費用対効果のバランスが悪いという理由で建設が後回しにされて来たところほど、地方負担を伴なう直轄道の建設を強いられることになったものだから、地方団体から直轄事業の地方負担を軽減又は廃止せよ、という意見が出てくる。もっともなことである。
高速道路会社の税金を注ぎ込むことを止めたといって、今回のような措置をとることは全く矛盾してはいないか。

一、地球温暖化対策として化石燃料の使用を節減するという大方針を建てておきながら、長距離を自動車を走らせようとすることは全くおかしい。できるだけ公共の交通機関を利用するのが温暖化対策の主要な柱ではなかったか。

一、高速道はそもそも建設の当初から同一距離同一料金と定めてきたと聞いているが、今回の措置は原則を破るものである。交通の多い道路と少ない道路とをメーター当り同一料金とすることについて反対意見があるが、とにかく樹てた大原則は無暗に破るものではない。
 高速道を車で走るか、新幹線などの併行している鉄道に乗るか、という選択があったのに、高速道の料金を、土日とは言え思い切って安くすれば、併行している鉄道が客を奪われることによる損失が予想される。現にもう苦情が出ている。当り前である。観光などで人を外に誘い出そうというなら、鉄道にも補助すべきであるという議論にどう答えるのであろうか。

一、高速道の料金の設定について、現行制度では投資を全部償却したら無料にすることになっているが、維持管理費に見合う分は永久に料金として徴収するというように料金の計算方法を改めれば、現在でもかなり料金を引き下げることが可能である、と言われている。その方式の変更で高速道の料金を思い切って下げることは大賛成である。国からの金の補填など要らなくて、料金を下げられれば、結構なことではないか。読者諸賢いかに思われるか。


(相沢英之)