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活動報告
地声寸言『新総合経済対策で充分か』

 先日この稿で、今は解散、総選挙などをしている時か、何よりも景気対策を急ぐべきではないか、と記した。麻生首相は、二度も決心を変更したと公明党などからも文句を言われているようであるが、ともかくも、先内閣から引き継ぎの補正予算を成立させた上、十月三十日新総合経済対策を発表した。「生活対策」と銘打った対策は生活支援定額給付金なども盛り込んだもので、直接の財政支出にはならない中小企業向け支援を含み総事業規模は約二七兆円に達し、小渕政権が平成十年に実施した「緊急経済対策」の二三兆円を超える大型となった。
   まだ中味が確定していないところもあるが、ともあれ、先ずは一般国民が渇望している景気対策を固めたことは評価すべきもので、野党もこの際政局は措いて、この対策の実現に協力して貰いたいと思う。もちろん、与党原案を丸飲みする必要はないし、主張すべきところは主張し、修正すべきところは修正を要求したらいい。与党も原案に固執せず、野党の意見も取り入れたらいい。ともあれ、事態は急、スピードをもって対処すべきである。
   十月三十一日付けの日経新聞の記事には「政府の生活支援策の主な内容」という見出しで次のとおり列記している。


 その一つ一つについて評することは止めるが、これで追加景気対策として充分かな、と問われれば、いくつかの私見を述べてみたい。
  一、 以前は財政投融資計画がいわば第二の予算のような形で、少なくとも対外的に政府の施策として重要な役割を果していた。
  例えば、中小企業対策と言えば、いわゆる政府系中小金融三機関として国民、中小の両公庫と商中が長期低利の資金を拡充するとして、その融資枠を明示していた。道路公団等の事業促進のため投融資の拡大も重要な柱であった。
  私は、今でも財政投融資計画の持っていた役割は重要なものであり、価値あるものだと思っている。
  確かに年金事業団などの各地における施設整備などに問題があり、民間企業の領域に不必要に資金を撒いているなど強い批判があったことは事実であるが、だからと言って、財政投融資計画全体のスキームを崩壊させようという考え方には反対であった。 私は、中央における官の役割を地方に委すべきものは地方へ、民間でやれることは民間へ移すことについて基本的に異論を持っているものではない。ただ、その移す限度と時期は慎重に検討すべきものだと思っている。
  財政投融資計画の改変は、官から民への資金の移動の一つの体様であって、考え方それ自体に反対をするものではないが、要は限界をどうするか、という点が問題なのである。
  米国のサブプライム問題に端を発した世界的な金融不安、景気後退の情勢に対して、何よりも先ず景気対策を求められている麻生政権も昔のように財政投融資計画を思うように活用し難い点に隔靴掻痒の思いを懐いているのではないか。
  今回発表された新総合経済対策も、昔のように財政投融資計画をフルに活用できれば、さらに実のある、迫力のあるものにできたのにと、そこが残念であるが、今おかれている日本の財政状況下ではせい一杯の努力の表れかとも思う。
  強いて言えば、地方が今もっとも渇望している事業はいわゆる公共事業である。単独を含めれば、公共事業は往時の半分以下の量となっている。建設業は中小のみか、地方の大手も倒産寸前にあるものが少なくない。不要な工事を失対事業のように実施する必要は毛頭ないが、それにしてもいずれ実施しなければならない、例えば高速道路を含む道路の建設などは、遠慮することなく進められるように資金の手当てをさらにすべきではないか。
  又、中小企業等へ対する金融機関の貸し渋りは目に余るものがある。融資保証枠の拡大などに相当配慮がなされているようであるが、保証がついても貸出しを渋る金融機関が少なくないことも視野に入れて、当面全額保証をするなど、切角の配慮が充分生きるようにすべきであると思っている。
  又、定額給付金について所得の多い世帯を除外すべしという意見も閣内にあるようであるが、わが国の場合、既に所得税の累進制で充分調節が行われているのであるし、事務の煩瑣も考えて、この際、全世帯一律に支給するのが妥当であると考えている。
  以上の私見について、読者諸賢如何に思われるか。
 
(相沢英之)