相沢英之公式サイト
活動報告
地声寸言『安心安全内閣』

 福田首相は八月一日、内閣改造と自民党役員人事を行い、福田改造内閣をスタートさせた。
 今回の改造は、先に安倍内閣の閣僚を殆んど引き継いで発足した福田内閣が、これで初めて自前の、と言ってはおかしいが、自分の考えによる内閣と党役員の人事を行なったと言うことになるのだろう。そこは、先ず注目すべきだと思う。
この欄では、こういう人事問題にはあまり触れないようにして来たが、今回はとくにこの人事が今後わが国の政治、経済の流れに深くかかわりうる幾つかの諸点があると思われるだけに、一言感慨を記してみたい。
 福田内閣は発足以来、「国民の目線で」とか「消費者重視」とかいうようなキャッチフレーズを掲げて来たが、どうも今一つ政策の基本的方向が明らかにならない憾みがあった。
 もっとも、ある意味で気の毒であったのは、参議院で与党が過半数を失うという、衆参捻れ現象が法案の処理を極めて難しくするという条件のもとでの政治体制であるだけに、与党の思うような政策を進めて行くことが出来ず、それが、一体福田内閣は何をしようとしているのか、およそハッキリしないというような批判となってハネ返っていた点である。
 これは、誰が首相となっても変わる状態ではないが、そうとわかっていても、世間はそう見ないで、現内閣への不平不満となる。
 福田内閣が平成十九年九月にスタートした時、マスコミは支持率の低さから短命内閣と見るものもあったが、私は、低空飛行ながら結構長持ちをするのではないか、と人に話しもし、ここに書きもした。
 その理由の一つは、閣僚の殆んどを安倍内閣から引き継いだわけであるが、福田内閣の閣僚、党の役員は、小泉内閣の時と様変りで、各派閥の代表ないし重鎮を数多く取り込んでいるので、清新さは欠けているとしても、土台のある 種の安定があり、少なくとも各派閥のなかから明らさまに内閣をつき上げたり、反乱を起こしたりするような動きは起こり難いということであった。 小泉首相の内閣人事は、全く派閥とは関係なく、聞くところによると、派閥からの推薦のあった人は、わざわざ外したという噂まで流れていた。こういうやり方は、閣内で浪風は立たないもの、各派閥の中では、従来の順送り的人事が全く無視されただけに、やるならお好きにどうぞと言ったような空気が出て来ないとは言えなかった。
 そこは、小泉首相のワン・フレーズ・ポリティクスで、とにかく俺が決めたことはやるという風な、ある意味では独裁的なやり方に大いに賛否両論はあったにしても、国民の眼からは見え易い政治であるが故に、八十三名もの小泉チルドレンを生むというような衆議院選の圧勝を招来したと言えよう。
 然し、今回の改造内閣の人事を見ると、明らかに郵政改革反対派の保利、野田を初めてとして消極派の数人が役についているし、いわゆる改革推進派は登用されていない。福田首相が意識的にやったか、どうかは明らかではないが、世間がそう受け取っても無理ではない。
 小泉首相は就任に当り、改革を推進するためには、「自民党をぶっ壊す」と声を大にして叫んだ。党はぶっ壊れなかったが、少なくとも古くから党の強固な基盤となっていた幾つもの組織をぶっ壊したし、野党支援に追いやった。そのつけが参議院選にも回って来たと見られないこともない。
 どう小泉首相が言おうと変わらない者も無論いるが、そうでないのも少なくない。まして、利害関係が底にあって結びついている党の支持者は離れ易い。これは一つは政策がかかわる。郵政改革などは、その最たるものである。他にもある。
確かに政策がどう変わろうと、誰が首相になろうと、自分は代々自民党だという人達も少なくはない。だから痩せても枯れても百十万人近い党員が続いているのである。
 然し、自民党の支持者といっても大部分は党員ではない。そこで風が吹くと動く。一昨々年の衆議院選の時は自民党に吹いた風は、昨年の参議院選の時は逆に民主党などの野党に吹いた。恐ろしい変わりようである。とくに一対一となり易い小選挙区はそうである。
 今度の改革の目玉は麻生幹事長であるという。前回総裁選の政敵となった麻生氏を党の最高責任者である幹事長に取り込んだ意味は大きい。この福田・麻生の二枚看板でとくに国民的人気の大きいという麻生の看板で次の総選挙を戦うことになりそうだが、さて、国民はどう評価するか、どういう風が吹くか。
 安心・安全内閣。少なくとも小泉内閣のようなけれん味はない。各派閥の代表又は重鎮を党四役、閣僚に配備して、党内からのくすぶりは防げると思うし、又、一応、実務者としてもやれそうな顔触れを揃えているから、方向さえはっきりと定めて走り出せば、国民の安心感も増してくるのではないか、と思う。又、とかく奇矯な言動で世間を騒がした人もいなくなったし、安全感は出てくるのではないか。
 この辺で低空飛行から上昇気流に乗って欲しいと思うのは私だけではあるまい。読者諸賢如何に。

  (相沢英之)