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活動報告
大蔵週報 平成20年1月18日(金) 地声寸言『年の初めに』

 一年の経つのが早いこと、今更ながら驚いています。
 年の初めに、今年は是非これこれのことをやりたいと心秘かに思っていたことが、殆んど実行されずに終るかと思うと情けなくもなりますが、今年こそは是非誓いを減らしても実現に努力したいと考えています。
 私事を最初に書いて了いましたが、さて、振り返って昨年はどういう年だったかとしみじみ考えています。
 あれよあれよと思われたバブルが崩壊し、日本の経済は逼塞していましたが、やっと立ち直って来たところ、昨秋のサブプライム問題の波及もあって株価は急落し、何となく嫌な感じのままの年越しとなったのは、甚だ残念であります。
 政治の面でもいろいろ紆余曲折がありました。二〇〇五年の衆議院議員の総選挙では、小泉ブームに乗って八十三名のチルドレンを生むという自民党の大勝利となりましたが、昨年七月の参議院議員の選挙では、安倍総裁以下の懸命な奮闘にも拘わらず、風は野党へ流れ、自民・公明の与党は大敗を喫し、民主党に第一党の地位を明け渡すことになりました。自民党は、ことに一人区二十九のうち二十三区で負けるという惨敗ぶりで、粛として声なき状態でありました。
 何が、そうさせたか。分析すれば、いろいろな原因が見当りましょう。年金始め与党のいろいろな公約の実現が危ぶまれたこと、もろもろの不祥事が続いたことなど幾つも考えられますが、一つには、総選挙で余りに勝たせ過ぎたと思った一般有権者が自民党におきゅうをすえるというような気持ちもあって野党に走ったこともあったと思われます。選挙民の微妙なバランス感覚は、有難くもあり、時に迷惑となることもあるようです。人間もそうですが、党も大勝をすればどうしても気が緩むし、又、何となく驕る空気が出てくるのでしょう。その辺が選挙民の心情を害うのではないでしょうか。
 さわさりながら、この衆参両院のねじれ現象が長く続いては、自公の内閣も思い切った政策の展開ができないどころではなく、参議院の民主党がウンと言わなければ、あらゆる議案もストップしかねないという危機的な様相にあるわけです。
 予算と条約は別として、衆議院で可決した法律案がもし参議院で否定された場合には、衆議院で三分の二の多数をもって可決すれば成立することになっています。又、参議院が衆議院から法案を送付された六十日以内に採決しない時も同じような措置が可能となっています。この度の国会では、参議院が期限内に採決しないことにも対応し得るように、異例の正月を挟んでの延長国会となったわけです。
 しかし、この方法は、現行法上可能であるといっても、そう何にでも連発して使用することは難しいでしょうし、もし連発して使えば、マスコミや世論からはきっと反発が起きて来て、内閣の支持率をさらに下げる危険性があります。
 このような衆参のねじれ減少が続くと、少なくとも法案の成立は遅れ、果ては、何事も決しきれない日本の政府という印象を各国に与え、国際的地位を低めることになるのではないか。そういう事態はできるだけ回避しなければなりません。
 自民、民主大連立の構想は、小沢代表から持ちかけられたことをナベツネこと読売新聞渡辺恒雄会長が明らかにしています。次の衆議院選挙では到底逆転の可能性はないと読み取っていた小沢氏なら考えうる提案であります。ただ、これは小選挙区のままでは実現は至難というより、不可能に近く、中選挙区に改めて対処するつもりか、さもなければ、小沢氏が最悪の場合党を割って出て新党を組み、自民党と連合する考えもひらめいていたのではないかと憶測しています。
 このような与野党のねじれ現象が日本の国の内政にも外政にも大きな障碍となっていることを直視すれば、それを解消し、何はともあれ、政治の進展を図るためには、思い切った一歩を踏み出さなければならないと小沢氏は考え、それに又、福田総理の同調したことであろうことは、充分考えられるところであります。
 その小沢氏の意中が全く傅わらない形で、大連立構想が民主党の幹部会で一致して反対、否定されたことは、小沢代表にとって予想外のことであったと思われますが、又、そういう反対を予想していなかったとすれば、小沢氏の読みが全く誤っていたと言わざるをえません。
 ただ、一石は一石でも、大きな一石を投じたわけです。波紋は大きなうねりを生まなかったけれども、決してただ消え失せただけではないと思います。ねじれ現象ではどうともならない現実は厳として存しているからであります。
 平成二十年度の予算は編成されました。何だか余り特色のない、まぁこんなところかといった感の予算でありますが、現状では、致し方のないところでしょう。総選挙を睨んで、バラマキ的な面もあるとマスコミは批判していますが、そもそも予算は一部の人のためのものではありません。ただ、どうも、方向が、色彩が必ずしも明らかでないとは言えるかも知れません。
 ただ、この程度の措置で与党の票が増えるとも思われません。
 要は、年金問題を始め、決すべきところは決して、政策の方向を明らかにすること、飽くまでもねじれ現象を解消して、粛々と政策を樹て、実現に向ける努力し得る体制を作り上げることに、今まで以上の情熱をもって取り組むことが福田内閣に求められているのではないか、と思いますが、読者諸賢如何に思われるか。