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活動報告
大蔵週報 平成17年11月4日(金) 地声寸言『特別会計は減らせ』

 財政法上、一般会計の外に特別会計の設置が認められている(財政法第十三条第一項)。「「国が特定の事業を行う場合、特定の資金を保有してその運用を行う場合その他特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限り、法律を以て、特別会計を設置するものとする。」(同条第二項)しかし、国家の財政収支を一目で見られるようにするには、できるだけ特別会計は作らない方がいい。
 特別会計は、戦後、最も多い時には四十五あった(昭和四十一、四十二年)。その後、かなり整理、統合されて来たが、それでも現在(平成十七年四月一日)三十一も存在する。
 特別会計を設けるについては、それぞれ理由があるから、何でも彼でも簡単に廃止というわけには行かないが、それでも、もう当初の目的を果したもの、それ程特別会計として区分する必要のないもの、規模が極めて小さくて一つの特別会計とする必要のないものなど、幾つも廃止しても差支えないものがある。
 従って、戦後六十年、このへんで特別会計全体について、も一度一つ一つ点検をし、その存廃を議論することは大事なことである。
 も一つ、特別会計を吟味、検討する必要があるのは、今まで、とかく、予算というと一般会計ばかり重要視されて、特別会計については国会でも検討されることが殆んどなかったため、とかく特別会計の中味について議論がなされなかったからである。
 敢て、治外法権というような古い言葉は使わないが、財政当局、とくに主計局において特別会計というと、収支の赤が出て、一般会計からの繰入れでも必要とならない限り、局議でも余り問題とされず、主計官、主査などの担当委せになっていることが多かった。
 もちろん、だからといって、いい加減な査定が行なわれていたわけではないが、いわば係に委せれている所であるために、必ずしも上司の眼が充分届かず、あまつさえ、一般会計の予算で取り難い事項の予算は、理屈をつけて特別会計内で処理してもらうような現象があった。
 厚生保険や労働保険の特別会計のように一般会計と混在しているようなところでは、一般会計の予算要求を何とかかわして満足させるために、施設費や事務費の特別会計の負担部分を多くしたりするようなこともなくはなかった。
 かつての国鉄、郵政、電々、専売などの特別会計は、事業としての収支を明らかにすると同時に原則として独立採算性を維持するために戦前から設けられていたものであるが、既にこれらの事業特別会計はあらかた公社になったり、株式会社になったりして、今は国有林野のみとなっている。
 道路、港湾、空港、国営土地改良などの公共事業関係の特別会計は、それ自体固有の収入を持っているものもあり、場所によっては債券発行もできるようにしているところから、特別会計としての存在意義もあったと思われる。
 しかし、このあたりの特別会計はなくして一般会計にその収支を取り込んでも、それ程実際問題として障碍はないと思う。
 揮発油税などのいわゆる道路特定財源との関連が問題となっているが、揮発油税はそもそも法律上は目的税ではなく、ただ道路整備費の財源等の特例に関する法律によって、この税の収入に相当する金額以上の額を道路整備に充てることを規定しているに過ぎず、重量税も目的税ではなく、ただ、創設の際の田中幹事長の強い要請によって、税収の八割は道路整備に、二割は国鉄の新幹線の整備及び在来線の復線電化の財源に充てることにしたのであって、税の性格は、揮発油税と同じく一般財源である。
 なお、重量税創設の際に田中幹事長から特別会計を作るように強力な要求があったが、特別会計の整理が必要とされている時期に、新しく作ることはどうしても避けたという、当時の主計局長の私と主税局長の高木の強い反対によって、取り止めで納得を得たという経緯がある。
 ただ、これらの特別会計を一般会計に取り込んだ際、相関連する収入支出の対応が明らかにならないという批判に対しては、それに応える方法は、例えば款を起すようなことでやれるのではないか、と思う。
 厄介なのは、国債整理基金や外為資金のような特別会計である。これらは、いわゆる歳入、歳出予算とは一寸感覚が違うので、一般会計と合体させることは無理だし、意義がないと思われる。しかし、特別会計という名称に何となく馴染まない気もするので、一そ特別会計の名称を廃止して○○基金ということにしてもいいのではないか、と思う。
 なお、ここに一つの問題がある。私は、一般会計も特別会計も収入・支出の金額を必ずしも一致させる必要がないという論者である。その理由を述べるには、いささか紙数が足らないが、一般会計と特別会計とを合体させた場合、とくにこのことは検討に価いすると思っている。というのは、本来、特別会計の収支をピタリ一致させるために全く不必要な予備費を歳出予算に計上するなどの不可解な処置が従来当り前のように行なわれて来ているが、それは、やはり、再検討が必要な筈だし、もし、収支の金額が一致しなくとも妥当であるということになれば、特別会計を吸収した一般会計も歳入、歳出の金額を一致させる必要はない、と考えている。
 この点は、説明が不充分でご納得をいただき難いと思うので、別途、書くこととしたいが、読者諸賢如何に思われるや。